2022.12.19

つねづね草 ~元校長のひとり言~

 サッカーワールドカップでの日本チームの活躍に興奮した12月初旬でした。ベスト8の壁の高さを思い知らされた感はありますが、試合の展開や伝わってくるチームの雰囲気、日本人サポーターのゴミ拾いが世界中のメディアに紹介されるなど、日本人として恥じることの多かった今年でしが、締めくくりとしてすがすがしい気持ちにさせてもらいました。

「ブラボー!」です。

 中学部のカレンダーの表紙に「ウサギ」がありました。来年は卯年、ウサギは穏やかで温厚な性質であることから「家内安全」を示すそうです。また、その跳び姿から「飛躍」「向上」を象徴するものとして親しまれています。特に株式相場では、ウサギは跳ねるため景気が好転または回復すると言われているようです。経済的にも、社会情勢的にも、平和に向かって好転することを願います。

 実は今、「silent」というドラマにはまっています。第1話を見逃してしまい、第2話から見たのですが、「手話」の魅力に心動かされています。もちろん美男美女の俳優たちが長い指先で表わすサインの美しさも際立っていますが、「伝えたい」という素直な気持ちそのままに身を乗り出して、相手に向かおうとする姿がとても愛おしく見えます。俳優陣はたくさん手話を練習しているとのことですが、使えば使うほど身に付いてきている様子も、流暢さも、外国語など他の言語同様上達する様子が見えます。手話が中心でもあるドラマで、字幕も出るのですが、私が学んで覚えている手話の単語一つ一つの意味を訳すのではなく、言いたいことを訳して字幕にしているので、とても面白く使い方に興味がわきます。同じサインでもそれぞれの場面で訳が変わります。マカトンサインでもよく使う、「一緒、何、大丈夫、行く、買う」など日本手話から取り入れたマカトンサインも頻繁に見られますし、「話す、好き、嫌い、いいよ、ずっと」マカトンサインとは違う日本サインもたくさん見られます。そして、相手の顔を見て話す、表情も一緒に、丁寧に繰り返して表現する、そのことの大切さを教わります。

 旭出の教員のなりたてだった40年ほど前、マカトン法が未だ日本に届かなかった頃、「発信の道具に手話が使えそうだから習ってみたらいい」と先輩にアドバイスされ手話教室に通いました。手話をたくさん知らなくても聴覚障害の方が困っていそうな様子だったら、「どうしましたか?」と「何」のサインをしてくれたらすごく安心できると言われたことがありました。健聴者が手話で表わす時は、口もしっかり動かして口話法でも読み取ってもらえるように多面的に表現することが大事だと思いますが、まず顔を見て向き合うことが必要なのだと教わりました。言いたいことはいっぱいある、声では表しきれない言葉を、サインやシンボルを使って表示することは、高齢化社会に生きる私たち誰にとっても必要になるのではないかと思います。ドラマの結末も気になりますが、ハッピーエンドであることを祈ります。

 今年はお目にかかれなかった方々とも来る年にはまたお会いできる機会があればと思うこの頃です。どうぞ健やかに新年をお迎えください。

伝えたい 伝えて欲しい 向き合えば そこから始まる コミュニケーション